試着

ワンピース

数年前の夏のある日。

私はＵちゃんという友達から「お洋服を買いに行きたいからこちこちゃん一緒に選んでくれない？」と誘われる。

ちょうど私もショッピングに行きたかったので二つ返事でＯＫする♬

後日。

Ｕちゃんが気になっているというショップの店内で待ち合わせ。

私がお店に到着するとＵちゃんは既に店内で服を選んでいた。

私「どう？気になる服あった？」

Ｕちゃん「あっ！こちこちゃん今ワンピースを見ていたんだけどデザインがこっちのシンプルな方ともう１つの華やかな方、どっちが良いと思う？今日の予算的にはどっちか１着しか買えないの～」

私「見た感じだとシンプルな方がＵちゃんっぽい雰囲気だけど実際に着てみた方がイメージ膨らむんじゃない」

Ｕちゃん「そうだね。試着してみる♡」

Ｕちゃんはショップ店員に声を掛け店員の案内で試着室へ通される。

私も２人の後についていった。

汗

シンプルなワンピースに着替え、試着室から出てきたＵちゃん。

「このデザイン素敵なんだけどちょっと私のイメージと違うかな～どう思う？」と言いながら私の前で一回転しワンピースのシルエットを見せる。

なんと！！！

Ｕちゃんの試着したワンピースは背中一面と両脇部分がびっしょりと彼女の汗で濡れているではないか･･･( ﾟДﾟ)

Ｕちゃんのワンピースのイメージなど、どうでもよくなってしまった私。

他の人が買うかもしれないこのワンピースはＵちゃんの汗まみれ。

私はワンピースに滲んだＵちゃんの汗の方が気になってしまい、このワンピースが彼女に似合っているかどうか気が利いたコメントも言えず「ん？うん･･･」と言葉を発した。

するとＵちゃん、私の反応がいまいちだったからか「もう１つの華やかな方に着替えてみるね」と言い、また試着室に入った。

華やかなワンピースで試着室から登場したＵちゃん。

再び私の前で一回転してみせる。

なんと！！！！！

またもや彼女が着替えた新品のワンピースは、背中一面と両脇部分が汗でびっしょりと濡れていた。

ワンピースには汗が染み込み、その部分の色が濃く変色してしまっている。

私が汗染みに釘付けになっていると･･･　

Ｕちゃんは「こっちは私には似合わないね～」と呟いた。

私の耳にはその言葉も入って来ず、どうしても新品のワンピースに付いた彼女の汗が気になり「う～ん」という返事はしたものの気が利く言葉は出てこなかった。

ショップ店員がＵちゃんに「いかがされますか？」と問う。

Ｕちゃんは「どっちも私のイメージとは違ったので今回はやめておきます」と試着室に戻り自分の服に着替えた。

試着し終えた２着のワンピースをＵちゃんは店員に渡すや否や「すみませーん。私メチャクチャ汗っかきなんでワンピースに結構私の汗付いちゃいました♡」と笑顔で告げる。

店員は汗の付いた２着のワンピースを受け取ると“本当だぁ”と心の声が漏れそうな表情で苦笑いし「あ～。はい」と言って、試着室の前にあるハンガーラックに２着のワンピースを掛けた。

すぐ元の場所に戻さないところを見ると、Ｕちゃんの汗染みが消えるまでこのハンガーラックでワンピースを乾かすのだろう。

この一連の様子を俯瞰して見ていた私･･･

Ｕちゃんは服を破いたり壊したりした訳ではない。

汗なら乾かせばいずれ消えるだろう。

店頭に飾ってある服はいろんな人が試着するのだからこういう事もあるよなぁ･･･と思った。

しかし私自身多少神経質なところもあるため、Ｕちゃんとのショッピングを境に店頭商品で気になるものがあると店員を呼び「この服の在庫はありますか？」と聞いてからしか服を買えなくなってしまった。