某有名化粧品会社の広告
私の所属するモデル事務所は化粧品やスキンケアといったオーディションもしくは仕事を私に優先的に回してくれる。
色白美肌なことから雑誌や会報誌の「ビューティーページ」「スキンケアページ」、企業広告等に起用されることが多いためである。
数年前某有名化粧品会社からオーディション案件が事務所に来た。
親子2世代でこの化粧品を使おうというコンセプト
オール媒体の企業広告だった。
案件としては実の親子でオーディションを行いたいという内容。
実の親子で容姿のつり合いがとれない場合、
似たような顔立ちの母と子を親子の設定にしてオーディションをやり直す。
なるべくは本物の親子の方がリアリティが出るので良いとのことだった。
真っ先に白羽の矢が立ったのは私
マネージャー
「親子だったらお母様も肌が白くて綺麗でしょ?東北出身の方だったら綺麗よね?顔は似ている?ぜひお母様もモデルやっていただけない?」
私と母は顔立ちが似ていない。
どちらかが優れているというわけではなく似ていないのだ。
母は身長も低く西洋人のような顔で目鼻立ちが大きい。
私
「顔は似ていない。母は芸能人で言うと柏原芳恵に似ている。肌は白く綺麗かもしれないが身長が低く見栄えがモデルっぽくない」
と言った。
しかし「ぜひ写メを送ってほしい」というので母に相談。
母はそこまで乗り気ではなかったがどうせ書類選考で落とされるだろうと面白半分で写メをくれた。
マネージャー
「本当だ!似ていないのね。系統は違うけど雰囲気が良いから書類提出してみるね」
やはりプロの目から見ても私たち親子は顔が似ていなかったらしい。
私もどうせ【親子】といっても顔が似ていないので落とされると思い、気にしていなかった。
すると数日後書類選考が通ったとの連絡。
親子でオーディションに行ってほしいと言われた。
マネージャー
「化粧品のオーディションだからお母様に年相応に美しく見えるメイクをしてあげて、行ってきて」
と頼まれた。
一番困惑したのは母である。
まさか自分がモデルとしてオーディションを受けるとは夢にも思わなかったようだ。
当日、母にメイクを施し洋服も選びオーディション会場に向かった。
何人も同世代の実の親子モデルたちが会場に集っていた。
母は会場を見て圧倒されてしまった。
母
「こちこと同世代のモデルさんたちは皆いかにも事務所に入っています!という風貌ね。その母親たちも皆背が高くて元モデルさんみたいな感じ!お母さんだけ場違いじゃないの?」
と遂に母は緊張がMAXに膨れ上がる。
母は身長が低い。156cm。会場にそんな小さな女性はいなかった。ちなみに私自身もそこまで身長が高いわけではないため、昔から身長にはコンプレックスがあり8~9cmのハイヒールを履いて背が低くないように見せている。よって私と母が並んでいるだけで20cmくらいの身長差がある。
カメラテスト
私たち親子のオーディションの順番になり、審査会場に呼ばれた。
母は尋常ではなく震え始めた。
隣にいた私にそれが伝わってきた。
娘としてメチャクチャ可哀そうに思えて不安になった。
面接には20名くらい審査員がいた。
まずはカメラテスト。
母が一人で撮る。
カメラマンに「ニッコリ笑ってください」と言われる。
母はあまりの緊張で顔が引きつり笑えない。
遂には口周りの筋肉がピクピク痙攣し始めた。
何度カメラマンに注文されても笑えない。
私はとてつもなく胸が痛んだ。何でド素人である一般人の母にこんなことをやらせているのだろうと苦しくなった。。。(>_<)
そして次は私の番。
言われた指示通りのポージングで数ショット撮影。
問題なくクリア。
「次に親子の顔を並べた写真を撮りたい」
ということで身長差を埋めるためカメラマンは箱馬を持ってくる。
カメラマン
「お母様は小柄なのでこの上に乗ってください」
箱馬に乗せられた母の手はブルブルと震え、隣にいる私にもその振動が伝わってきた。
娘が隣にいる安心感からか一人で写真を撮る時よりはリラックスできたようでカメラマンの数回の注文で笑顔が作れたようだった。
質疑応答
そして質疑応答。
審査員
「どういったお仕事内容が多いですか?」
私
「肌も綺麗で髪も長いことから、ビューティーやヘアのお仕事をいただくことが多いです」
審査員
「弊社の化粧品は使われたことありますか?」
私
「あります」
審査員
「どういった印象をお持ちですか?」
と言った内容
・
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審査員
「ではブックを見せてください」
ブックとはオーディションの際にモデルが絶対に所持していなければいけない自分の作品集。写真を20~30枚くらいA4サイズのフォトファイルに収め、自分をプレゼンテーションするアイテム。
審査員
「確かにこちこさんはファッション系ではなくビューティー系のお仕事が多いのですね」
「現在、弊社化粧品と競合がかかっているお仕事はありますか」
私
「×月で〇〇社の広告は終了しましたので現在の競合はありません」
審査員
「丁寧にありがとうございます。わかりました」
そこで私の質疑応答は終了。
そして別の審査員がいじわるな質問を母にしてきた。
審査員
「お母様も普段からモデルさんのお仕事をされているのですか?」
「モデルさんでしたらブックを見せてください」
私はギョッとした。どうみたら母がモデルをやっているように見えるんだ。この身長と立っているだけでずっとブルブル震えが止まらない母に。その質問に怒りすら覚えた。
母は蚊の鳴くような声で、声を震わせ「私は一般人。ただの主婦です」と、か細く答えた。
私は胸が締め付けられるような思いになった…
母だって心の中でどうしたら私がモデルに見えるのよと思ったに違いない。
そのいじわるな質問を最後に面接は終了。
終わって母は安堵したように見えた。
帰りの電車での母
「毎回こちこは仕事を勝ち取るためにあの緊張感にさらされているのね。凄いね。お母さんはもうコリゴリだわ」
「今回このオーディションが受からなかったらお母さんが足を引っ張ったんだよ。最初から謝っておく。ごめんね」
「お母さんにモデルさんはできないや」
「仮に仕事が決まってもお母さんは笑顔ができないと思う…」
母は自分の実力を知ってしまったようだった
最終的に結果が出て何の奇跡か私と母は最後の2組まで残っていたとのこと。
ただもう1組の親子と比べた時私たち親子は顔が似ていないという理由で落とされたがスペアとして当日までスケジュールを確保されていた。
結果的には親子で仕事をせずに済みホッとした私もいた。
もし一緒に仕事をしていたら私の方が子を思う母の如くハラハラして気が気でなかったであろう💦
いつの間にか私の方が母を心配する立場に変わってしまったと気付かされたオーディションであった😢
こちこさま、おはようございます♪
記事も拝見しましたよ
親子オーディション。リアルでしたね!
オーディションってドラマの世界でしか見たことなくて、こちこさまのブログ記事のような事が繰り広げられるのでしたかぁー
審査員する方の中には意地悪なことを言いますよね
わざとしか思えない失礼な質問でした。
そーゆー事も耐えてこその親子のオーディションでありましょうね。
ドラマみたいなリアルなお話でもありました☆
がちょ様✨そうなのですよ。
私も自分の事ならオーディションで嫌味言われてもプロとして受け入れますが‼️
どう見ても一般人の母にそれをやられると、母に対し切なく申し訳ない気持ちになってしまいます…。
母だって容姿の評価なんてされたくないだろうし、母の震えを近くで見て本当に胸が痛みました(>_<)
なんか嫌味な審査員ね!?怒
おかあさん、こちこちゃんの仕事の世界が見れて嬉しかったんじゃないかな??
娘の晴れ姿をみることほど、誇らしいことはないのでね。(^_-)-☆
うちも息子は私似だけど、娘はホントに似てない。苦笑
親子に見られたことないと思う。
ミコ様✨
いつも有難うございます。
子供の時はあんなに頼もしかった母が!
とても小さく儚げな人に見えてしまいました(T ^ T)
いつの間にか自分も大人になっているんですね…。
ミコ様の息子様も娘様も♡
素敵なミコ様のお子様ですから、ミコ様の自慢の宝物ですね!!
今回もとても面白かったです。読んでいてドキドキハラハラしました。
お母様の緊張がわたしにもリアルに伝わってきましたでも最後まで残るなんてすごい✨✨こちこ様とお母様が魅力的だったからですね
KO様✨
私も母が審査される立場だと笑顔が出来ない事にビックリしましたよ(゚ω゚)
もし、一緒に仕事することになってたら☆私の方がハラハラさせられて神経がもたなかったかも。。。
合格した方の親子の商品popを化粧品売り場に見に行った母は「あの母役の人は絶対モデルさんよ!一般人は笑顔出来ない!」と言い切ってました(๑˃̵ᴗ˂̵)